Mrs. GREEN APPLE「ライラック」歌詞の意味を解釈する。「青に似たすっぱい春」から始まった僕が、自分を愛せるようになるまでの物語だった。

歌詞分析

こんにちは!今回は、Mrs. GREEN APPLE「ライラック」の歌詞を解釈します。「青に似たすっぱい春」の痛みと輝きを紐解いていきましょう。

 

今回の謎

 

この楽曲は、爽やかながらもどこか切ないメロディに乗せて、聴く者の心の柔らかな部分に触れてくるような、不思議な力を持っています。その歌詞を深く味わうと、いくつかの問いが心に浮かびます。

  1. なぜこの曲のタイトルは、春の象徴である「ライラック」なのでしょうか?歌詞の世界観とどう結びついているのでしょうか?

  2. 「ライラック」の歌詞に登場する「人生単位の傷」とは何を指し、なぜそれを「愛おしく思いたい」と願うのでしょうか?

  3. 「ライラック」の物語の中で、主人公は「僕だけが独りのような夜」を経験しながら、どのようにして最終的に「僕は僕自身を愛してる」と断言できるようになったのでしょうか?

これらの謎を道標に、一人の人間の心の軌跡を辿る旅に出てみたいと思います。

 

歌詞全体のストーリー要約

 

この歌は、一人の人間が過去の痛みを乗り越え、不完全な自分を丸ごと受け入れるまでの壮大な心の物語を描いています。

物語は、過去のきらめきと現在のやるせなさを対比させながら、主人公が抱える戸惑いを描くところから始まります。やがてその葛藤は、自己否定と深い孤独という闇へと彼を引きずり込みます。しかし、そのどん底での経験すらも自らを動かす力に変え、最終的には過去の傷も不完全さもすべて含めて「自分自身」なのだと受け入れ、愛を宣言するのです。

 

登場人物と、それぞれの行動

 

この物語の中心には、二人の人物の影が見えます。

  • : 過去(青春時代)を振り返り、かつて抱いていた理想と現在の自分とのギャップに苦しんでいます。深い孤独や拭いきれない敗北感を経験しながらも、最終的には自身の傷や過去の全てを受け入れ、力強い自己肯定へと至る、この物語の語り手です。

  • : 「僕」が過去の記憶の中で待ち続けている存在。それは特定の誰かかもしれませんし、あるいは輝かしかった青春の日々の象G徴そのものかもしれません。「僕」の記憶の中で、決して色褪せることのない重要な位置を占めています。

 

歌詞の解釈

 

 

序章:過ぎてゆく時間と、色褪せない誇り

 

この歌は、まるで古いアルバムを一枚ずつめくっていくかのように、静かに始まります。

日々、寿命という限られた数字が減っていくという、誰もが抗えない現実。その一方で、美しい思い出や経験という数字が増えていく。この対比から、主人公が「時間」というものを強く意識していることがわかります。

続くフレーズでは、思い出がしまわれた「宝庫」が描かれます。古いものは棚の奥で埃を被っている。普通なら、それは忘れ去られ、価値を失っていくものの象徴です。しかし、彼はその埃の中に「誇りが光って見える」と感じる。この逆説的な表現が、素晴らしい。彼は過去を、単なる過ぎ去った出来事としてではなく、今の自分を形成する、きらめきを失わない大切なものとして捉えているのです。

この時点で、彼の過去への眼差しが、ただの感傷ではない、深い愛情に根差したものであることが伝わってきます。

 

第一章:青に似た春と、人生単位の傷

 

しかし、過去が美しいだけでは、物語は始まりません。

Pre-Chorusで描かれるのは、不安や倦怠感が入り混じる、ざわついた日常の心象風景です。準急電車に揺られる朝。そんな現実の風景から、彼の意識は一気に、あの春へと飛んでいきます。

「青に似た すっぱい春とライラック」

なんと鮮烈なフレーズでしょうか。「青」は未熟さや若さ、青春の色。それに「すっぱい」という味覚が加わることで、それは甘酸っぱいだけの思い出ではなく、チリっとした痛みを伴う記憶であることが示唆されます。そして「ライラック」。春に咲き誇るこの花は、若さや友情、思い出といった花言葉を持ち、この歌のテーマを象徴する重要なモチーフです。この情景の中で、彼は「君を待つ」。

そして、この曲の核心に触れる願いが歌われます。「痛みだす人生単位の傷も 愛おしく思いたい」。

まだこの時点では、彼はその傷を愛せてはいません。「愛おしく思いたい」という、切実な願望の段階です。そして、確かな答えもないままに大人になっていくことへの、大きな戸惑いを口にするのです。この漠然とした不安と、過去のきらめきとの間で揺れ動く姿は、多くの人が経験したことのある感情ではないでしょうか。大人になる過程での内省や自己形成への問いは、Vaundyの「僕にはどうしてわかるんだろう」で描かれる世界とも共鳴するようです。

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第二章:主人公になれなかった「僕」の現在地

 

時間は流れ、彼は「今」を生きています。

「一回だけのチャンス」を前にして、いつでも飛び出せるように準備はしていたい。けれど、現実はそれが難しい。このフレーズに、もどかしさが滲みます。

そして、彼の自己評価は、痛々しいほどに低い場所へと落ちていきます。かつては、自分も物語の「主人公の候補」くらいにはなれると思っていた。けれど、今の自分はどうか。「名前も無い役のような」存在で、脇役にすらスポットライトが当たるような「スピンオフも作れない」。この表現には、胸を抉られるようなリアリティがあります。

続くPre-Chorusでは、「くだらない愛を歌う際 嘘つきにはなりたくない」と歌われます。これは、何かを表現しようとするとき、あるいは誰かと愛を語らうとき、上辺だけの言葉で取り繕いたくないという、彼の誠実さの表れでしょう。だからこそ、彼は自分の心の奥底にある、このどうしようもない現実と向き合わざるを得ないのです。朝の準急電車から急行電車へと乗り換える描写は、ただ時間が進んだだけでなく、彼の焦りや、取り残されていくような心境の変化を象徴しているのかもしれません。

 

第三章:孤独と拒絶の夜(謎2への答え)

 

Bridge部分で、彼の内面に溜め込まれていた感情が、ついに堰を切ったように溢れ出します。ここは、この楽曲における感情の頂点であり、最も暗い闇の部分です。

「影が痛い」「光が痛い」。

光だけでなく、影すらも彼を傷つける。これは、世界そのものを拒絶している状態です。希望や明るい未来を信じられないのはもちろん、暗闇に安らぎを見出すことすらできない。

「価値なんか無い 僕だけが独りのような 夜が嫌い」

強烈な自己否定と、耐えがたいほどの孤独感。そして、彼は叫びます。「君が嫌い」。輝かしい過去の象徴であり、自分の理想そのものであったはずの「君」。その君を「嫌い」と言うのはなぜか。それは、あまりに眩しい過去が、今の惨めな自分を浮き彫りにするからかもしれません。あるいは、理想通りになれなかった自分自身への、やり場のない怒りの矛先が、過去の自分(君)へと向かったのかもしれません。

この底知れない闇、自己肯定感の完全な喪失、世界からの疎外感、これこそが「人生単位の傷」の正体なのではないでしょうか。それは、夢に破れたこと、理想の自分になれなかったこと、誰かを失望させてしまった後悔、そういったものが複雑に絡み合い、人生を通して、ふとした瞬間にズキリと痛みだす、癒えることのない傷。この苦しい夜の時間ごと「愛おしい」と思えるようになること。それが、この物語のゴールなのです。このどうしようもない孤独感は、内に秘めた感情がテーマであるback numberの「ブルーアンバー」の世界観にも通じるものがあります。

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最終章:敗北感の先にある自己受容(謎3への答え)

 

しかし、夜は必ず明けます。

闇の底で、彼は新たな決意を固めます。それは、この不完全な思いも、どうしようもなく「大事にしたくて」。そして、不安だらけの日々さえも「愛してみる」という、小さな、しかし確かな一歩です。

そして、彼は気づくのです。「感じた事のない クソみたいな敗北感も どれもこれもが僕を つき動かしてる」と。

あの暗く、痛みに満ちた経験は、決して無駄ではなかった。それこそが、今の自分を前へと進ませる原動力になっている。ネガティブな感情を、エネルギーへと昇華させた瞬間です。

この気づきを得た彼の視界は、劇的に変わります。

サビでは「鼓動が揺らすこの大地とハイタッチ」と歌われます。世界を拒絶していた彼が、今、自分が生きているこの大地と繋がりを感じ、生命の躍動を肯定しているのです。色褪せない過去の夏の記憶も、今の自分を支える力になっている。

答えのない問いは、まだ彼の心の中にあります。「何のために 誰のために 傷を増やしてゆくんだろう」。でも、それでいい。彼は「意味のない事は無いと信じて進もうか」と、未来へ向かって歩き出すのです。

 

歌詞のここがピカイチ!:「スピンオフも作れない」という絶望のリアリティ

 

この歌詞には胸に刺さる表現が無数にありますが、特に秀逸だと感じるのが「主人公の候補」だったはずが、「名前も無い役のような スピンオフも作れないよな」という一節です。

単に「脇役」や「モブキャラ」と言うのではなく、「スピンオフも作れない」と付け加えることで、絶望の解像度が格段に上がっています。主役になれないどころか、その脇の物語にすら光が当たる可能性すらない。これは、凡庸であること、その他大勢であることの残酷な現実を、これ以上なく的確に、そして現代的な言葉で表現しています。このどうしようもない自己評価の低さが、物語の最後に訪れる、あの壮大な自己肯定のカタルシスを、より一層感動的なものにしているのです。

 

モチーフ解釈:「ライラック」が象徴するもの(謎1への答え)

 

この楽曲のタイトルであり、重要なモチーフである「ライラック」。なぜこの花でなければならなかったのでしょうか。

ライラックの花言葉には、「友情」「思い出」「謙虚」「純潔」などがあります。特に「友情」と「思い出」は、歌詞の中で「君」と共に描かれる青春時代を象徴していると言えるでしょう。

また、ライラックは春の、それも短い期間にだけ咲き誇る花です。その儚さは、二度とは戻らない、輝かしい若き日々、青春そのもののメタファーとして完璧に機能します。

歌詞の中では「青に似た」という言葉が添えられています。ライラックには紫や白といった色の品種が一般的ですが、あえて青春の色である「青」と結びつけることで、この花が象徴するものが、単なる春の思い出ではなく、未熟で、痛みを伴い、それでも鮮烈に記憶に残る「あの頃の青い春」そのものであることを強調しています。

つまり「ライラック」とは、この物語の出発点である、すっぱくて痛みを伴う、だけど忘れがたいほどに美しい青春の記憶の象徴なのです。

 

他の解釈のパターン

 

 

パターン1:これは「君」との死別・離別の歌

 

この歌詞を、大切な「君」との永遠の別れを描いた歌として解釈することもできます。その場合、「君を待つよ ここでね」という言葉は、もう二度と会うことのできない「君」を、思い出の場所で待ち続けている「僕」の姿と重なります。「思い出の宝庫」は故人を偲ぶ心のメタファーとなり、「人生単位の傷」とは、愛する人を失った、決して癒えることのない喪失感そのものを指すでしょう。

この解釈に立つと、Bridge部分の叫びはさらに悲痛な意味を帯びてきます。「君が嫌い」という言葉は、自分をこの世に一人残していってしまった「君」への、愛情の裏返しである悲痛な叫びと聞こえます。そして、主人公はそんな「君」との思い出(あの頃の青)を、憎しみや悲しみごと全て胸に抱きしめ、残された自分の人生をしっかりと生きていくために、「僕は僕自身を愛してる」と誓う。これは、喪失の悲しみを乗り越え、再生へと向かう、鎮魂と決意の物語として深く胸に響きます。

 

パターン2:「僕」と「君」は同一人物であるという解釈

 

もう一つ、作中に登場する「君」を、他人ではなく「過去の僕自身」、特に、まだ何にでもなれると信じていた純粋で理想に燃えていた頃の自分、と捉える解釈も非常に興味深いものです。

この視点では、「君を待つよ」というフレーズは、いつかまたあの頃のような理想の自分に戻れる日を待ち望んでいる、という意味になります。「主人公の候補」だった過去の自分(君)と、「名前も無い役のような」現在の自分との対比は、より直接的な自己内対話として浮かび上がります。

そして、「君が嫌い」という衝撃的な叫びは、理想通りに成長できなかった現在の自分を形成する原因となった、無垢で、ある意味では無防備だった過去の自分自身に対する、複雑な自己嫌悪の表れと解釈できます。輝かしい可能性に満ちていた過去の自分がいるからこそ、今の自分がより惨めに感じてしまう。その葛藤の果てに、「あの頃の青(=過去の自分)」を否定するのではなく、今の自分がそれを受け入れ、統合する。そうして、「僕は僕自身を愛してる」と宣言することで、過去と現在の和解が果たされる。これは、一人の人間が自己を統合し、成熟していく、非常に深い内省の物語として読み解くことができるでしょう。人生の様々な局面で、過去の自分を振り返り、今の自分との「こたえあわせ」をする姿は、大森元貴さんのソロ曲「こたえあわせ」にも通じるテーマかもしれません。

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歌詞の中で肯定的なニュアンスで使われている単語・否定的なニュアンスで使われている単語のリスト

 

肯定的ニュアンスの単語:

美しい, 誇り, 光って, 喝采, 連帯, 愛おしく, チャンス, 主人公, 愛を歌う, 美徳, 大事にしたくて, 愛してみる, つき動かしてる, ハイタッチ, 色褪せはしない, 忘れられないな, 緑が育つ, 意味のない事は無い, 信じて, 進もう, 愛そう, 覚えていようぜ, 光ってる, 認めてあげようぜ, 愛してる, 愛せてる

否定的ニュアンスの単語:

減る, 古い, 埃, 不安, 濁った, グワングワン, 倦怠感, 痛みだす, 傷, 宛ても無い, 忘れてしまう, 失くしてしまう, 難しい, 名前も無い役, スピンオフも作れない, くだらない, 嘘つき, 疎ましさ, 影が痛い, 価値なんか無い, 独り, 夜が嫌い, 君が嫌い, 優しくなれない, 光が痛い, 希望なんか嫌い, 置いてけぼり, 一人が怖い, 我儘, 拗れた, 不完全, 不安だらけ, クソみたいな敗北感, 傷を増やしてゆく, 答えがない, 苦味, 割に合わない疵

 

単語を連ねたストーリーの再描写

 

「独り」で「不安」な「夜が嫌い」だった「僕」は、

「人生単位の傷」や「クソみたいな敗北感」も、

「つき動かしてる」と信じて、

「割に合わない疵」も全て認め、自分を「愛してる」と知る。

 

SNS投稿用の紹介文

 

Mrs. GREEN APPLE「ライラック」の歌詞が刺さりすぎる。「主人公になれなかった僕」が、人生単位の傷も全部抱きしめて自分を愛せるようになるまで。その軌跡に涙。

#MrsGREENAPPLE #ライラック

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