M!LK「イイじゃん」歌詞解釈|「ビジュイイじゃん」は、世界の中心で君と僕が交わす最強の魔法の言葉だった。

歌詞分析

こんにちは!今回は、M!LKの「イイじゃん」の歌詞を解釈していきます。聴くだけで自己肯定感が爆上がりするこの曲、その魅力の秘密に迫ります。

 

今回の謎

 

この楽曲は、底抜けに明るい肯定のメッセージに満ちています。しかし、その言葉の裏には、現代社会を生きる私たちの心に深く刺さる、切実なテーマが隠されているように思えてなりません。そこで、今回は以下の3つの謎を解き明かすことで、この曲の核心に迫りたいと思います。

  1. なぜタイトルは「イイじゃん」という、軽いようでいて力強い肯定の言葉なのだろうか?
  2. タイトルの「イイじゃん」が示すように、この曲は全肯定の歌だが、なぜ「ビジュ」や「盛れてる」といった外見的な部分から肯定が始まるのだろうか?
  3. 「イイじゃん」という肯定の言葉は、誰から誰に向けられているのか?そして、その関係性は歌詞の中でどのように変化していくのだろうか?

 

歌詞全体のストーリー要約

 

この楽曲が描く物語は、大きく3つのステップで構成されていると解釈できます。

物語は、悩める「君」を「僕」が一方的に応援するところから始まります。しかし、その関係は次第に変化し、「君」の存在が「僕」をも支えるようになります。そして最終的には、「僕」と「君」という一対一の関係を超え、「みんな」で肯定し合うという、より大きな連帯感へと物語は昇華していくのです。

 

登場人物と、それぞれの行動

 

この歌詞の世界には、主に3つの存在が登場します。

  • : 最初は「君」を一方的に応援し、肯定する存在として登場します。しかし、物語が進むにつれて、「君」の笑顔に支えられ、自身も自己肯定感を育んでいたことが明らかになります。最終的には、画面の奥にいる不特定多数の「君」たち、つまり私たちリスナーに向けて、肯定のメッセージを発信するエンパワーメントの担い手へと成長します。
  • : 周囲の目や評価を気にし、俯き、涙を流してしまうような、少し自信なさげな人物として描かれます。「誰かの為に生きないで」という言葉が向けられることから、自分らしさを見失いかけているのかもしれません。しかし、「僕」からの温かい肯定を受け、次第に前を向き、その存在が逆に「僕」を支える力となっていきます。
  • みんな: 「僕」と「君」を取り巻く社会、そしてこの歌を聴いているすべての人々を指します。歌詞の中では、互いにレッテルを貼り合う「窮屈なこの時代」の住人として描かれますが、同時に「僕ら」として連帯し、互いを「イイじゃん」と褒め合うことで、その窮屈さから抜け出せる可能性を秘めた存在でもあります。

 

歌詞の解釈

 

それでは、歌詞を詳しく見ていきましょう。この曲が、私たちにどのようなメッセージを投げかけているのか、その深層に迫ります。

 

「君」への全面的な肯定宣言から始まる物語

冒頭、いきなり力強い宣言から曲は始まります。これは「僕」から「君」へのメッセージでしょう。何のてらいもなく、ただひたすらに「君」の味方であることを伝えています。

続くAメロでは、その理由が語られます。「誰かの為に生きないで」「君は君らしく輝けばイイ」というフレーズは、「君」が周囲の評価や期待に縛られ、自分らしさを見失いかけている状況を暗示しています。そんな「君」に対して、「僕」は、俯いた顔やその涙さえも「唯一無二さ」と、ありのままを全肯定するのです。

この冒頭部分のコード進行は、非常にシンプルでストレートな響きを持っています。それはまるで、「僕」の「君」に対する想いが、一点の曇りもない純粋なものであることを音楽的に表現しているかのようです。難しい理屈は抜きにして、ただ「君の味方だよ」というメッセージが、心にまっすぐ届きます。

 

窮屈な時代へのカウンターとしての「褒め合い」

プレコーラス(サビ前)で、この歌が単なる個人間の応援歌ではないことが明確になります。ここで提示されるのは、「レッテル貼られる窮屈なこの時代」という、現代社会に対する鋭い批評眼です。

私たちは、知らず知らずのうちに他者をカテゴライズし、評価し、そして自分自身も評価されるという息苦しさの中に生きています。SNSを開けば、他人のキラキラした一面が目に入り、自分と比較して落ち込んでしまうこともあるでしょう。そんな時代だからこそ、「僕らくらい 褒め合っていたい」という願いが切実に響きます。

ここで主語が「僕」から「僕ら」に変化している点も見逃せません。これは、「僕」と「君」だけの閉じた関係から、社会全体へと視座が広がったことを意味します。「世界の真ん中で」という言葉は、他人の評価など気にせず、自分たちが世界の中心なのだという力強い意志表示です。周りがどうであれ、自分たちだけでも互いを肯定し合う文化を作っていこう、という決意表明のように聞こえます。

 

なぜ「ビジュ」から?肯定のハードルを下げる魔法の言葉(謎2への答え)

 

そして、いよいよサビです。

あれ 今日ビジュイイじゃん

盛れててイイじゃん

ここで歌われる肯定の言葉は、驚くほど具体的で、少し軽い響きすらあります。「ビジュイイじゃん」――。これは、内面の素晴らしさや努力といった、少し重くなりがちなテーマではなく、まず見た目という分かりやすいポイントから入る、というこの曲の巧みさの表れです。

自己肯定感が低い時、「君は素晴らしい人間だ」と言われても、素直に受け取れないことがあります。しかし、「今日の髪型、イイじゃん」「その服、似合ってるじゃん」といった具体的な外見への言及なら、少しだけ受け入れやすいのではないでしょうか。

これは、自己肯定感を高めるための、いわば入口戦略です。まず、目に見える部分、すぐに変化がわかる部分を肯定することで、相手の心の扉を少しだけ開ける。そしてそこから、「みんなみんなイイじゃん」「らしくってイイじゃん」と、肯定の範囲を存在そのものへと広げていく。この流れが非常に巧みです。

まさに、こっちのけんとさんの「けっかおーらい」が、うまくいかない現実の中でも自分をヒーローとして肯定していく姿を描いているように、この曲もまた、日常の些細な「イイじゃん」から始めて、自分自身を肯定していく力を与えてくれます。

こっちのけんと「けっかおーらい」の歌詞の意味を考察!人生を進んでいくみんながヒーロー
こんにちは!今回は、こっちのけんとさんの「けっかおーらい」の歌詞を解釈します。一度聴いたら耳から離れないキャッチーなフレーズの裏に隠された、諦めと肯定が交錯する、現代の新しいヒーロー像に迫っていきます。今回の謎この楽曲のタイトルであり、何度...

 

肯定の連鎖が生む、視点の逆転(謎3への答え)

 

2番に入ると、物語に新しい展開が訪れます。

ここで、視点が「僕」自身の内面へと移ります。驚くべきことに、ずっと「君」を応援している側だと思っていた「僕」もまた、「君」の笑顔に「見守って」もらうことで、ようやく自分を好きになれてきた、と告白するのです。

これは、肯定という行為が一方通行ではないことを示唆しています。誰かを肯定する言葉は、巡り巡って自分自身をも救う力になる。人を褒めることで、自分の心も温かくなる。そんな経験は誰にでもあるのではないでしょうか。

「僕」から「君」への一方的な応援歌に見えたこの曲は、ここで「僕」と「君」が互いに支え合う、相互的な関係性の物語へと深化します。

そして、その関係性を手に入れた「僕」は、さらに力強く、今度は「画面の奥 見つめている 君に問いかける」のです。これは、私たちリスナーへの直接のメッセージです。あなたが今を生きているその姿自体が、誰にも奪えない素晴らしいものなのだと。

2番サビでは、肯定の内容も「夢追ってイイじゃん」「信じてイイじゃん」「やっちゃってイイじゃん」と、より内面的で、行動を後押しするものへと変化しています。外見の肯定から始まった物語は、ついに生き方そのものを肯定する、普遍的な応援歌へとたどり着くのです。

 

「イイじゃん」が持つ、軽さと強さの同居(謎1への答え)

 

楽曲のタイトルであり、サビで何度も繰り返される「イイじゃん」という言葉。この言葉の持つ絶妙なニュアンスこそが、この曲の核心です。(謎1への答え)

「素晴らしい」「最高だ」といった言葉は、少し気負ってしまうかもしれません。しかし、「イイじゃん」には、良い意味での軽やかさがあります。友達に「それ、イイじゃん!」と声をかけるような、日常的な感覚です。この軽やかさが、肯定し、肯定されることへのハードルをぐっと下げてくれます。

しかし、同時にこの言葉は非常に強い力も持っています。ダメだと決めつけられていたこと、無理だと思わされていたことに対して、「いや、イイじゃん」と返すことは、既存の価値観へのささやかな、しかし力強い抵抗(カウンター)となり得ます。

この曲のコード進行は、全体を通して明るく開けた響きが中心ですが、サビで「イイじゃん」と歌われる瞬間は、特にキャッチーで力がこもっています。まるで、「それでいいんだよ!」と、音楽全体で背中を押してくれるような感覚です。この軽さと強さの同居こそが、「イイじゃん」という言葉が持つ魔法の力の源泉なのです。

 

歌詞のここがピカイチ!:肯定の起点を「ビジュ」に置いた戦略性

 

この歌詞の最も独創的な点は、やはり肯定のスタート地点を「ビジュイイじゃん」という外見の称賛に置いたことでしょう。自己肯定や自己実現といったテーマを扱う楽曲は数多くありますが、その多くは内面の尊さや努力の過程を称えるものが多いです。しかしこの曲は、あえて最も表層的で、人によっては「軽い」と捉えられかねない「ビジュアル」から入ります。

これは、現代ならではの非常にクレバーな戦略だと私は思います。SNSが普及し、誰もが「見られる」ことを意識する時代において、「見た目」は自己認識の大きな部分を占めています。そこをまず肯定してあげること。それは、相手の心にスッと入り込むための、最も効果的なアプローチなのかもしれません。まるで、CUTIE STREETが「かわいい」を武器に自己肯定を貫くように、この曲もまた、現代的な価値観を逆手に取った応援歌と言えるでしょう。

CUTIE STREET「かわいいだけじゃだめですか?」歌詞解釈:「かわいい」は生存戦略!小野小町も本気出す戦国時代を生き抜け!
こんにちは!今回は、CUTIE STREETのデビュー曲「かわいいだけじゃだめですか?」の歌詞を徹底解釈します!一見、甘くてキュートなこの曲に隠された、したたかで壮大な「愛の戦い」の物語へようこそ!今回の謎この楽曲を聴いて、私の頭の中は「!...

内面を肯定する前に、まず「今日の君、イイじゃん」と伝える。その一言が、自信を失いかけた心の氷を溶かす最初の一滴になる。この歌詞は、そんなコミュニケーションの真理を教えてくれているようです。

 

モチーフ解釈:「笑顔」が繋ぐ肯定のループ

 

この歌詞において、「笑顔」は非常に重要なモチーフとして機能しています。

最初は、「君の笑顔が好き」という、「僕」から「君」への想いの象徴として登場します。この時点での笑顔は、「君」が持つ魅力の一つです。

しかし2番では、「くしゃり笑う その笑顔が見守ってくれてるから」と歌われることで、その意味合いが大きく変わります。「君」の笑顔は、単なる魅力の対象ではなく、「僕」を支え、自己肯定へと導く力強い存在へと変化するのです。

つまり、

  1. 「僕」が「君」を肯定する
  2. 肯定された「君」が笑顔になる
  3. その「君」の笑顔が「僕」を肯定し、支える
  4. 支えられた「僕」が、さらに強く他者を肯定する力を得る

という、美しい「肯定のループ」が生まれています。このループの中心にあるのが「笑顔」というモチーフなのです。それは、言葉を超えたコミュニケーションであり、人と人とを繋ぎ、温かい関係性を育むための触媒として、この歌詞の世界で輝いています。

 

他の解釈のパターン

 

この楽曲は、非常に普遍的な応援歌として受け取れますが、少し視点を変えることで、また違った物語が浮かび上がってきます。

 

解釈A:アイドルとファンの関係性を描いた物語

 

この解釈では、「僕」をアイドル(M!LK自身)、「君」をファンとして読み解きます。イントロの「君だけを見つめてるんだ」という言葉は、ステージ上からファン一人ひとりに向けるアイドルのメッセージと捉えることができます。「誰かの為に生きないで」というエールは、学校や職場で悩むファンへの応援歌となるでしょう。そして、サビの「ビジュイイじゃん」は、ライブやイベントに来てくれたファンへの親しみを込めた呼びかけのようにも聞こえます。

この解釈で特に興味深いのは2番です。「最近自分を好きになれてきた」という「僕」(アイドル)の告白は、「君」(ファン)の笑顔や応援があったからこそだと語られます。これは、ファンとアイドルが互いに支え合い、共に成長していくという、尊い関係性そのものを描いているのではないでしょうか。「画面の奥 見つめている 君」というフレーズも、配信などで応援してくれるファンへの直接的な言及と解釈でき、この物語のリアリティを増しています。この曲は、M!LKからファンへの、最高のファンソングなのかもしれません。

 

解釈B:SNS時代の自己肯定と他者承認の歌

 

「レッテル」「画面の奥」といった言葉を手がかりに、この歌の舞台をSNS空間と仮定する解釈です。「僕」と「君」は、SNS上で繋がった友人、あるいはインフルエンサーとフォロワーのような関係かもしれません。「ビジュイイじゃん」「盛れててイイじゃん」という言葉は、投稿された写真に対する「いいね!」や肯定的なコメントのメタファーと捉えられます。現実世界では「窮屈」さを感じているけれど、SNSの中では「僕らくらい 褒め合っていたい」というわけです。

この解釈では、「周りばかり追わなくていい」という言葉が、フォロワー数や「いいね」の数を気にしてしまう人々へのメッセージとして響きます。承認欲求が渦巻くSNSの世界で、数字や他人の評価に惑わされず、自分たちの「イイじゃん」という感覚を信じよう。そして、その肯定の輪を広げていこう。この曲は、SNSという現代的なツールをポジティブに活用し、連帯感を生み出していくための、新しい時代のマニュアルのような歌として聴くことができるでしょう。それは、圧倒的な自己肯定で常識を塗り替えていくCreepy Nutsの「Bling-Bang-Bang-Born」とも通じる、現代的な強さの表現と言えるかもしれません。

Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」の歌詞考察。「チート」と言われるほどの才能は、実は泥臭い「生身」の積み重ねだった。
こんにちは!今回は、Creepy Nuts「Bling-Bang-Bang-Born」の歌詞を解釈します。圧倒的な自己肯定の源泉、「生身」の輝きに迫ります。今回の謎この楽曲を聴いて、多くの人がそのエネルギーに圧倒されたのではないでしょうか。...

 

歌詞の中で肯定的なニュアンスで使われている単語・否定的なニュアンスで使われている単語のリスト

 

 

肯定的ニュアンスの単語リスト

 

イイじゃん, good, 輝けば, 唯一無二, 笑顔, 好き, 褒め合いたい, 世界の真ん中, ビジュイイ, 盛れてて, めちゃくちゃ, みんな, らしくって, 見惚れてる, 夢追って, 信じて, やっちゃって, 波乗ってる, 味方

 

否定的ニュアンスの単語リスト

 

誰かの為, 俯いた顔, 涙, ダメ, 無理, 決めつけないで, 周りばかり, レッテル貼られる, 窮屈なこの時代, 奪えない

 

単語を連ねたストーリーの再描写

 

俯いて涙を流す「君」の、唯一無二の笑顔が「好き」。

レッテルばかりの窮屈な時代でも、「僕」らは味方。

ビジュも夢も、「君」らしくて「イイじゃん」。

「みんな」で褒め合い、世界の真ん中で輝こう。

0 0 votes
この記事を評価しよう
Subscribe
Notify of
0 Comments
Oldest
Newest Most Voted
Inline Feedbacks
View all comments
0
ぜひあなたの意見を聞かせてください!x
()
x
タイトルとURLをコピーしました