こんにちは!今回は、ちゃんみなの「I hate this love song」の歌詞を深く、じっくりと読み解いていきたいと思います。この一見矛盾したタイトルに込められた、複雑でリアルな恋の駆け引きの行方を見届けましょう。
今回の謎
この楽曲が持つ、まるでミステリー小説のような構造を解き明かすため、私は3つの大きな謎を設定しました。
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タイトルにもなっている「I hate this love song(このラブソングが嫌い)」という言葉は、文字通り嫌悪感を示しているのでしょうか?それとも、全く別の感情の裏返しなのでしょうか?
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歌詞の中で、最初は「Boy, you know it’s not fair」と歌われているフレーズが、曲の最後には「Girl, you know it’s so fair」へと、主語も内容も劇的に変化します。これはなぜなのでしょうか?
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あれほど「言わない」と頑なだった主人公が、最終的には「二人でせーの」で想いを伝えようとします。この心変わりのきっかけと、「二人でせーの」という言葉に込められた本当の意味とは何なのでしょうか?
これらの謎を解くことで、この曲がただのラブソングではない、高度な心理戦を描いた傑作であることがわかります。
歌詞全体のストーリー要約
この楽曲は、恋する二人のもどかしいパワーゲームが、劇的な結末を迎えるまでを、鮮やかな3つのステップで描いています。
物語は、主人公「私」が、想い人である「あなた」に対して、自分の好意を隠し通そうとする意地の張り合いから始まります。しかし、相手の思わせぶりな態度に心は揺れ、駆け引きは膠着状態に。最終的に「私」は、この不毛なゲームを終わらせるための画期的な解決策を提示し、物語は予想外の結末を迎えるのです。
登場人物と、それぞれの行動
このスリリングな恋のゲームには、二人のプレイヤーが登場します。
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私 (I): この物語の主人公。相手への好意を自覚しているものの、プライドが高く、自分から告白することを頑なに拒んでいます。「あなた」の気持ちを見透かしたような態度に苛立ちながらも、どこかでその駆け引きを楽しんでいる節もあります。
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あなた (you): 「私」の想い人。「私」の気持ちに気づいていながら、わざと知らないふりをしているかのような、思わせぶりな態度を取るミステリアスな存在。物語の後半では、実は「私」と同じように、想いを伝えられないでいることが示唆されます。
歌詞の解釈
それでは、この複雑に絡み合った恋の糸を、歌詞を追いながら丁寧に解きほぐしていきましょう。
「言わない」と決めた、このラブソング(謎1への答え)
物語は、「絶対に笑わないでね」という前置きから始まります。この一言で、今から歌われることが、非常に個人的で、少し恥ずかしい内容であることが示唆されます。この歌(メロディー)には、「あなた」と過ごした何気ない日常の記憶が散りばめられている。それ自体が、もうほとんど告白のようなものです。
プリコーラスでは、「私」の苛立ちが募ります。「知らないふり」をして、全てを知っているかのように笑う「あなた」。その態度は、まるで「ほら、言ってごらんよ」と、「私」に告白を促しているかのよう(Like you want me to say it)。
この焦らしプレイに対し、「私」はコーラスで徹底抗戦を宣言します。「言わない 口が裂けても」「教えない あなただけには」。たとえ世界中の人が私の気持ちに気づいたとしても、あなたにだけは自分から明かしてやるものか、という強い意地。そして、ここで核心的なフレーズが飛び出します。「I really hate this love song」。
これは、文字通りの嫌悪感ではありません。「好き」という気持ちをこんなにも厄介で、もどかしいものにさせる、この恋という状況そのものへの苛立ち。そして、本当は伝えたいのに素直になれない、意地っ張りな自分自身への自己嫌悪。そんなアンビバレントな感情が、「嫌い」という言葉に凝縮されているのです。「こんな気持ちにさせられる歌なんて、大嫌い!」というわけです。
「一言だけでいい」- 隠された本当の願い
しかし、そんな強気な「私」も、2番のヴァースでは本音を漏らします。「難しい言葉は言わないで」「ただわかりやすく一言だけ」欲しい。ぐちゃぐちゃな心も部屋も、その一言だけで報われる気がする、と。
結局のところ、「私」も相手からのアプローチを切に願っているのです。「loving you」なんて大げさな言葉じゃなくてもいい。「I like you」でも、「また会おうよ」でもいい。何かしらの確信が欲しいのです。
この、お互いに本心を探り合い、騙し合うかのようなギリギリの関係性は、tuki.の「騙シ愛」が描く、嘘と真実が入り混じる複雑な人間関係とも通じるものがあります。

「二人でせーの」- 駆け引きの終わりと、究極の解決策(謎2、3への答え)
もどかしい時間が続く中、ブリッジで物語は大きな転換点を迎えます。「You know what? 今なら I can tell you」。膠着状態に痺れを切らしたのか、「私」はついに「二人の最後のかくしごと」を終わらせる決意をします。
そして、最後のコーラス。ここで、この曲最大の仕掛けが発動します。
「知りたいなら言ってもいいよ」。そして、続く言葉は「But you and I, 二人でせーの」。
さらに、これまで「Boy, you know it’s not fair(ねぇ、それってフェアじゃないよ)」だった歌詞が、「Girl, you know it’s so fair(ほら、これですごくフェアだろ)」へと、鮮やかに反転するのです。
この**「Boy」から「Girl」への変化は、視点の逆転**を示唆しています。つまり、最初のコーラスは「私(女性)」から「あなた(男性)」への訴えだったのに対し、最後のコーラスは「あなた(男性)」から「私(女性)」への応答、あるいは、「私」が相手の立場を完全に理解し、その気持ちを代弁していることを表しています。
これにより、この物語が一方的な片思いではなく、お互いに想い合っているのに素直になれない、二人の高度な心理戦であったことが、最後の最後で明らかになるのです。
そして、この不毛な駆け引きを終わらせるための究極の解決策が、「二人でせーの」。
どちらが先に告白するか、というプライドの張り合い、恋の主導権争いをやめ、対等な立場で同時に想いを打ち明けようという、画期的な提案です。これなら、どちらかが「負ける」ことはない。まさに「so fair」な解決策。この恋の駆け引きそのものが、二人にとっての「くだらない話」となり、ついに関係は次のステージへと進むのです。
この、どちらが主導権を握るかというギリギリの駆け引きは、櫻坂46の「Make or Break」が描く、恋の究極の選択にも通じるスリリングさがあります。

歌詞のここがピカイチ!:「Boy, it’s not fair」から「Girl, it’s so fair」への鮮やかな反転劇
この歌詞の最も素晴らしい点は、間違いなく**「Boy, you know it’s not fair」から「Girl, you know it’s so fair」への、たった一行の鮮やかな変化**でしょう。この一行だけで、物語の力学は180度ひっくり返ります。それまで「私」の一方的な葛藤だと思っていた物語が、実は両想いの二人のじれったいラブゲームであったことが発覚する。この構造的な仕掛けは、聴き手に「やられた!」と思わせる快感を与えてくれます。歌詞というフォーマットの可能性を最大限に活かした、見事な構成力です。
モチーフ解釈:かくしごと / 歌 (love song)
この楽曲において、「かくしごと」と「歌」は、物語を駆動させる重要なモチーフです。
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かくしごと: これは、二人の間にある「好き」という気持ちそのものです。物語の冒頭では、これは「私」だけが抱える「かくしごと」のように見えます。しかし、物語が進むにつれて、実は「あなた」も同じ「かくしごと」を抱えていたことが明らかになります。「二人の最後のかくしごと」を終わらせること、つまりお互いの気持ちを打ち明け合うことが、この物語のゴールなのです。
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歌 (love song): この「love song」は、「かくしごと」を意図せず暴露してしまう、危険なメディアとして機能します。「言わない」と固く決意している「私」ですが、この歌を通して、彼女の想いはダダ漏れになっています。だからこそ、彼女は「I hate this love song」と、自分の気持ちを代弁してしまうこの歌を「嫌い」だと言う。歌は、言葉にできない本音を映し出してしまう、厄介で、しかしどこか愛おしい鏡のような存在として描かれています。
他の解釈のパターン
解釈A: 一人の女性の中での内なる対話説
この物語を、一人の女性の中にある「本音」と「建前」の葛藤として解釈することも可能です。「Boy」や「Girl」は特定の性別を指すのではなく、自分の中にある男性的な部分(理性、プライド)と、女性的な部分(感情、素直さ)の象徴と捉えます。「言わない」と意地を張るプライドの高い自分と、「一言だけでいいから言葉が欲しい」と願う素直な自分が、心の中で激しく対立しているのです。最終的に「二人でせーの」というフレーズは、その二つの人格が和解し、「ありのままの気持ちを表現しよう」と一つになることを決意する、自己受容のプロセスを描いた物語として読むことができます。
解釈B: アーティスト・ちゃんみなとリスナーの関係性の歌
もう一つの視点として、**「私」をアーティストであるちゃんみな自身、「あなた」を彼女の音楽を聴くリスナー(ファン)**と解釈する読み方です。アーティストは、自らの内面(love song)を作品としてさらけ出すことに、常に恥じらいや抵抗を感じています(I hate this love song)。一方、リスナーは、そのアーティストの本心をもっと深く知りたいと願います(Like you want me to say it)。「二人でせーの」という呼びかけは、アーティストが一方的に作品を届けるのではなく、リスナーと共に作品を完成させ、感情を共有し合おうという、新しい関係性の提案かもしれません。音楽を通した、アーティストとファンの理想的なコミュニケーションの形を描いた歌としても解釈できそうです。
歌詞の中で肯定的なニュアンスで使われている単語・否定的なニュアンスで使われている単語のリスト
肯定的ニュアンスの単語
loving you, I like you, I will see you, 報われる気がする, so fair, くだらない話, 大体わかるでしょ
否定的ニュアンスの単語
笑わないでね, 逸らして, 知らないふりして, breathを飲んで, 言わない, 言えない, not fair, 知らないままでもいいや, I really hate this love song, 簡単な事じゃない, 難しい言葉, ぐちゃぐちゃ, 裂けても, 何があっても, くだらない話, いらないもう前置きなんか
単語を連ねたストーリーの再描写
このラブソングは嫌い。私の気持ちを知ってるくせに、知らないふりするあなたはずるい。
でももう駆け引きは終わり。
二人でせーので、最後のかくしごとを終わらせよう。