こっちのけんと「けっかおーらい」の歌詞の意味を考察!人生を進んでいくみんながヒーロー

歌詞分析

こんにちは!今回は、こっちのけんとさんの「けっかおーらい」の歌詞を解釈します。一度聴いたら耳から離れないキャッチーなフレーズの裏に隠された、諦めと肯定が交錯する、現代の新しいヒーロー像に迫っていきます。

 

今回の謎

 

  1. この楽曲のタイトルであり、何度も繰り返される「けっかおーらい」とは、単に「結果オーライ」ということなのでしょうか?それとも、そこには別の深い意味が隠されているのでしょうか?

  2. 歌詞に登場する「ヒーロー」とは、一体誰のことを指しているのでしょうか?そして、なぜそのヒーローは「迷える」存在として描かれているのでしょう?

  3. 「僕らはもう諦めた」という絶望的なフレーズと、「看板突き破って飛んじゃってええで」というパワフルな肯定のメッセージは、なぜ一つの楽曲の中に同居しているのでしょうか?

 

歌詞全体のストーリー要約

この楽曲は、かつてスターになるような輝かしい未来を夢見ていた「僕ら」が、厳しい現実に直面し、疲弊していく姿を描きます。そして、一度は理想を「諦める」という絶望的な境地に達します。しかし、物語はそこで終わりません。その諦めた現実ごと、不完全な自分ごと「けっかおーらい」と丸ごと肯定し、迷いながらも進んでいく「新しいヒーロー」の姿を提示する、という力強い再生のストーリーが描かれています。

 

登場人物と、それぞれの行動

 

  • 登場人物:

    • 「僕ら」/「俺たち」: この物語の主人公。現代社会で夢と現実のギャップに苦しみ、疲弊している人々。かつては輝かしい「可能性」を信じていたが、今はそれを諦めている。

    • 「君」: 「僕ら」と同じように、社会のルールの中で苦しみ、助けを求めている個人の象徴。

    • 「ヒーロー」: 「僕ら」/「俺たち」自身のこと。世界を救うような完璧なヒーローではなく、迷い、苦しみ、諦めを経験しながらも、自分たちの現実を歩んでいく「等身大のヒーロー」。

  • 行動:

    • かつては「ノービス(初心者)からスターへ」というサクセスストーリーを夢見ていた。

    • しかし現実は、疲れた顔(目の下のクマ)で、窮屈なルール(ヨレてるスーツ)を身に纏い、助けを求めている。

    • 輝かしい未来を夢見ることを「諦め」、理想の「成りたいもん」にはなれない自分を受け入れる。

    • 道端に転がる「僕の可能性」=「なれなかった自分」の姿と向き合う。

    • 最終的に、その諦めた現実、迷える自分自身を「けっかおーらい」と全肯定し、ヒーローとして歩み続けることを決意する。

 

歌詞の解釈

 

こっちのけんとさんの「けっかおーらい」は、その底抜けに明るいサウンドとは裏腹に、現代社会を生きる私たちの心に深く突き刺さる、鋭い諦念と、そこからの力強い再生を描いた楽曲です。

 

理想のストーリーと、疲弊する現実

 

楽曲は「け、けっかおーらい」という呪文のようなフレーズで、私たちをその世界に引き込みます。

Verse 1で語られるのは、「好印象なノービスから転がるスターに」という、誰もが一度は夢見るようなサクセスストーリーです。これは、この歌の主人公である「僕ら」がかつて抱いていた、理想の姿なのでしょう。

しかし、続くVerse 2で、その理想は無残に打ち砕かれます。

カメラがぐっと現実に寄り、「君の瞳が助け求めてる」という、切実なワンシーンを切り取ります。目の下のクマ、シワのあるマスク、ヨレてるスーツ。これらは、社会のルールの中で疲弊し、個性を失っていく現代人の肖像そのものです。最初の「めでたしなストーリー」とは、あまりにもかけ離れた現実がここにあります。

 

(謎3への答え)「諦め」を肯定するための「破壊」

 

そんな息苦しい現実に対して、プレコーラスは強烈な解放のメッセージを叩きつけます。

「正義の肯定 ナンセンスな命で」。

世間一般で言われる「正義」や「常識」なんてものは一旦無視して、たとえ自分の人生が「ナンセンス(無意味)」に思えても、それを丸ごと肯定しろ、と。

そして、「看板突き破って飛んじゃってええで」と畳み掛けます。これは、社会が作ったルールや期待という名の「看板」をぶち壊し、そこから逸脱してもいいんだという、パワフルな許可です。後先考えずに動けば「boom!」と破裂してしまうかもしれない。それでもいい。まずは現状を破壊しろ、と。

この破壊的な衝動は、この後に続く「諦め」のフェーズに進むために、どうしても必要なプロセスなのです。現状に甘んじるのではなく、一度すべてを壊してみる。その先にこそ、本当の肯定が待っているからです。

 

(謎2への答え)「迷える俺たち」こそがヒーロー

 

そして、サビでこの歌の核心的なヒーロー像が提示されます。

「おっと! 迷える俺たちのヒーロー」。

ヒーローは、一点の曇りもない完璧な存在ではありません。むしろ、どうすればいいか分からずに「迷っている」俺たち自身こそが、この物語のヒーローなのだ、と宣言します。

苦労して、その手に何を握るのか。それは、輝かしい成功や富ではありません。「Get, get this! “All right”」。手に入れるべきは、「これでいいんだ」という、ささやかな、しかし揺るぎない自己肯定感なのです。

続くポストコーラスでは、「御伽話俺たちのヒーロー」と、理想のヒーロー像はあくまでフィクション(御伽話)であることを認めています。その上で、「身の程にも合うその日を願うから今 月、月下往来」。背伸びはせず、身の丈に合った幸せを願いながら、月の下、夜道を迷いながらも進んでいく(往来)。この現実的な視座こそが、このヒーロー像に深みを与えています。

 

物語の核心、「諦め」のプロセス

 

楽曲の中盤で、物語は一度、深い絶望の底へと沈みます。

「僕らはもう諦めたの」。

キラキラした未来を描くことをやめ、「軋む明日をただ歩いて」いく術を身につけた。これは、悲しいけれど、多くの人が現実を生き抜くために身につける処世術でもあります。

そして、その諦めは、痛みを伴う自己認識へと繋がります。

「成りたいもんに成っているみんな」と、「成れないもんに成っていく僕」。周囲の成功者と自分を比較し、自分が理想から遠ざかっていく現実を直視します。そして、帰り道に転がっているのは、かつて信じていた「僕の可能性」。夢破れ、道端に打ち捨てられた「なれなかった自分」の残骸と対峙するこのシーンは、あまりにも鮮烈で、胸が痛みます。この内に秘めた感情の描写は、back numberの「ブルーアンバー」が描く世界観とも通じるものがあるかもしれません。

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一度、徹底的に「諦め」を描いたからこそ、再び歌われる「けっかおーらい」という言葉が、薄っぺらいポジティブさではなく、ずっしりとした重みと説得力を持つのです。「諦め」は絶望的な終着点ではなく、新しい肯定を始めるための出発点だった。この構造こそが、この楽曲の最大の魅力です。

 

(謎1への答え)モチーフ解釈:「けっかおーらい」の本当の意味

 

この楽曲のタイトル「けっかおーらい」は、単に「結果良ければすべて良し(結果オーライ)」という意味だけではないでしょう。私はここに、二重、三重の意味が込められていると考えます。

一つは、「結果、往来」。

つまり、「色々あった結果、俺たちは今もこの道(往来)を歩いているじゃないか」という、プロセスの肯定です。成功というゴールに到達できたか否かではなく、迷い、苦しみながらも、今この瞬間を生き、歩み続けていること自体が「おーらい(All right)」なのだ、という力強いメッセージです。

そして、もう一つは「月下往来」との掛詞。

「月」が、手の届かない理想や夢の象徴だとすれば、「月下往来」とは、その理想に見守られながら、あるいは理想に焦がれながら、僕らが現実の道を行き来する姿そのものを指します。

つまり「けっかおーらい」とは、理想を諦めた現実を、ただひたすらに歩み続ける僕らの姿を、丸ごと「それでいいんだよ」と抱きしめてくれる、最高に優しい肯定の言葉なのです。こうした全肯定の姿勢は、窮屈な世の中を生きる人々を勇気づけるM!LKの「イイじゃん」の精神とも共鳴します。

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歌詞のここがピカイチ!:「僕の帰り道に 転がって突っ伏している 僕の可能性へ」という描写力

 

この歌詞の中で、特に文学的才能が光るのが「僕の帰り道に 転がって突っ伏している 僕の可能性へ」という一節です。抽象的であるはずの「可能性」という概念を、まるで道端で酔い潰れている人間のように、具体的な映像として描き出しています。かつて自分が夢見た輝かしい未来の成れの果て。それを、突き放したように、しかしどこか愛おしむように見つめている「僕」の視線。この絶妙な距離感が、深い諦念と、そこから立ち上がろうとする人間の強さの両方を描き出しており、聴く者の心に鮮烈なイメージを焼き付けます。

 

他の解釈のパターン

 

 

解釈1:これは社会への痛烈な皮肉を込めた歌であるという解釈

 

この楽曲を、諦めからの自己肯定ではなく、現代社会の構造に対する痛烈な皮肉や風刺として解釈することも可能です。「けっかおーらい」というキャッチーな言葉は、実は人々の思考を停止させ、夢や個性を諦めさせて管理するための、都合のいいスローガンなのではないか、と。ヒーローなんて御伽話だと教え込み、「身の程に合う日」を願わせることで、社会の歯車として満足させる。「看板突き破って」という衝動も、結局は一時的なガス抜きにしかならない。一見ポジティブに見える言葉の裏側に、深い絶望と、個人を抑圧する社会への静かな怒りを隠した、高度な風刺ソングとして聴くこともできるでしょう。この視点は、同じくこっちのけんとさんの楽曲「はいよろこんで」が持つ社会風刺性と地続きのものかもしれません。

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解釈2:これは全てのクリエイターに捧げる応援歌であるという解釈

 

この歌の「僕ら」を、こっちのけんとさん自身、あるいは全てのクリエイターの姿と重ね合わせる解釈です。「好印象なノービスから転がるスターに」は、誰もが夢見る成功の道。しかし、創作の現実は、人々の反応(君の瞳)を気にし、様々な制約(ヨレてるスーツ)の中で表現することの連続です。「成れないもんに成っていく」とは、商業主義に迎合したり、自分の表現したいことを見失ったりすることへの恐怖。「僕の可能性」とは、かつて信じていた自分の才能そのもの。そんな葛藤や妥協、諦めを全て経験した上で、それでも創り続けるんだという決意表明が「けっかおーらい」。売れるものも、本当にやりたいことも、全部ひっくるめて「結果、往来(自分の作品として世に送り出し続ける)」という、全てのクリエイターに向けた力強い応援歌として解釈することができます。

 

歌詞の中で肯定的なニュアンスで使われている単語・否定的なニュアンスで使われている単語のリスト

 

  • 肯定的なニュアンスの単語: けっかおーらい, 好印象, スター, めでたし, 優しい, 正義, 肯定, good, ヒーロー, All right, 御伽話, 自由, 月

  • 否定的なニュアンスの単語: 飢えてる, 目の下のクマ, シワのあるマスク, ヨレてるスーツ, ナンセンス, 後手に回れば boom!, 迷える, 苦労, 諦めた, 軋む明日, もう遅い, 成れないもん, 突っ伏している, 痛み, ナード

 

単語を連ねたストーリーの再描写

 

スターを夢見たが、現実は軋む明日を歩くだけ。

成れないもんになり、僕の可能性は道に転がる。

でも、そんな迷える俺たちがヒーロー。

諦めたこの結果も全部「けっかおーらい」だ。

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